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懸賞はいつも当たり ⑥

 俺たちはさっそく愛車のワゴン車に、コンピュータ1台、テレビ2台、マッサージチェアー1台を積み込んで出発した。
 車には思ったほど載らなかった。少しでも高く売ろうと、梱包された箱のまま積んだからだ。
 3軒まわり、俺たちが手にした金額は、18万ちょっと。定価の半分以下だったが、元手が掛かっていないのだから、こんなものか。
 売ってみて分かったことは、いちいち身分証を提示しなければならないことだ。中古の商品を買い入れる店は、故買商の免許を持ち、盗品を掴ませられないよう、警察署との連係関係を持っている。質屋と同じなのだ。
 最初はどきどきしたが、法律に反したことをやっている訳ではない(はずだ、多分)。免許証を見せ、住所、氏名、捺印をして、4点の大物をすべて売り捌いた。
 俺たちは最初の予定通り、豪華なディナーを摂るはずだった。だが落ち着いた先は、家の近くの焼肉屋だった。
 車を一旦家の車庫に戻し、歩いて向かった。なんとなくお互い、言葉少なに食事を終え、好きなビールもはずまなかった。
 「今日は家で風呂に入れるなあ」
 「そうね・・・でもいつまでかしら」
 「ん?!」
 「明日もきっと景品が届くわ。明後日も、次の日も、ずっと」
 「また売りに行くさ!」
 「あのね、最初の頃は宅配のひとも『また、当たったんですか』って、愛想よくしていたの。でもこの頃はなにか気味悪がっているみたい!」
 「宅配業者たって、1社だけじゃないんだろ」
 「3社ほどだけど、みんな荷物を下ろすと、そそくさと出ていくわ。怒っているみたいに」
 「べつに不正をしてる訳じゃないんだ!!」
 「でも、なんて云えばいいの」
 「・・・」

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《つづく》

 

[つづき]懸賞はいつも当たり ⑦

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