⑦
それから1週間後の日曜日、俺達は再び"故買屋"巡りをすることにした。
前回の経験で、どれだけ売ればどれ程の金額になるか見当がついていたので、今回はレンタカー屋で2トントラックを用意した。
荷台には、かさばる物を積めるだけ積み込んだ。そして「どうせ全部は行けないのだから」と、旅行クーポン券、その他紙モノ景品(ビール券、お食事券、遊園地招待券、等)も金券ショップに売り捌くことにした。
文美枝は昨夜遅くまで、どれを売ってどれを残すか、「ああでもない、こうでもない」とぶつぶつと独り言を云いながら、選り分けていた。
この1週間に届いた景品を列記するのはよそう。ひとつとして前から欲しかったものはなかったように思う。「物」に執着する気持ちが失せてしまったみたいだ。
懸賞に当たることに倦んでしまっただけなのかもしれないが。
売り先はタウンページで調べて、前回とダブらないようにした。俺達は黙々と仕事をこなし、結果、レンタカー代を差し引いて40万と少しの小銭が手に残った。
その夜、
「ねえ、もうそろそろ、これ、やめにしない?」と、文美枝が切り出した。
「やめるって、何を?」
「懸賞に当たること」
「やめるたって、やまるものじゃないだろ」
「どうしてそう思うの」
「どうしてって・・・、なぜ当たるのか理由さえ解っちゃいないのだし」
「ごめんね。実はわたし、ずっと前に気づいていたの。あなたには黙っていたけど!」
おれは急に喉の渇きを覚えた。妻の"実は私、・・・あなたには黙っていたけど"という言い回しに、なにやら得体の知れぬものを覚えたのだ。
「なにを・・・、だい?!」
「ちょっと来て」
妻は立ち上がり、手を引いて俺をコンピュータの前に座らせた。
「いい。見ててね!」
コンピュータはスリープしていた。背中越しに手が伸びてきて、がっしりとマウスをつかんだ。
妻の手は案外大きいのだと、その時初めて知ったような気がした。
文美枝はマウスを適当に動かして、PCを叩き起こした。
《つづく》
[つづき]懸賞はいつも当たり ⑧