■舞台監督とは?■
「舞台監督」という職業があります。
通常「ブカン」とか「ブタカン」と呼ばれています。
演劇や、コンサートの舞台稽古やリハーサルの際、演出家の意向に沿って、裏方(音響、照明、大道具、衣装、メイク等)をとりまとめる役目です。
その助手のことを「スケブタ」といいます。正しくは「舞台監督助手」。
しかしミュージシャン風というか、業界風に「隠語読み」すると「スケブタ」となります。
現場では「おーい、スケブタ! タバコ買ってきてくれ」とか、「俺はコーラと肉まん!」という具合に、スタッフからいいように、コキ使われます。
学生時代、私は演劇サークルに所属していました。入部してすぐの公演で、私は「役者でも裏方でもない」舞台監督助手をやることになりました。
芝居とは関係のない雑用係としているのもシャクでしたが、それよりなにより「スケブタ」と呼ばれることがたまらなく嫌でした。
「スケベな豚」みたいで・・・二重三重に屈辱的に感じたものです。
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演劇における「舞台監督」と、映画における「監督」とは全然違います。
演劇の世界では、「演出家」が一番上です。映画界に「世界のクロサワ(黒澤明)」がいたように、演劇では「世界のニナガワ(蜷川幸雄)」がいました。
先に書いた通り、舞台監督はあくまで演出家の下にいて、裏方のアンサンブルが旨くいくよう、コンダクターとして働きます。
■舞台監督の資質とは?■
まあ、極めて地味な仕事ではあるのですが、では「舞台監督」になるのには、どうすればよいか?
資質としては、裏方の仕事を理解し、仕事内容を十分に知っていなければ務まりません。それと、取りまとめ役なので「調整能力」。さらに裏方の「長」に当たるわけですから「親分気質」も必要でしょう。
通常、舞台監督助手を数年経験してからなるか、音響や照明のチーフを経て、皆に推されてなる、といったケースが多いようです。経験的に云うと、礼儀正しく、愛想がよくて、小さなことにコセコセしない人が大成します。
「ブカン」とは、どんなに時間が差し迫っていても、「言葉をゆっくりしゃべる人」というイメージも、私にはあります。
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さて、イベントの現場でも「舞台監督」を入れることがあります。
ファッションショーなど劇場を使う場合や、大きな展示会などの仕事の時です。
音響や照明、特殊効果(特効)を必要とする時や、装置や大道具を組み立てる必要のある場合も、「舞台監督登場」となります。
云わば、イベントスタッフという「裏方の一員」として、
「この仕事には舞台監督が必要だ」となる訳です。
イベントの現場ではいろいろなトラブルがつきものです。
それぞれの部署で処理しきれなくなった時、「ここはブカンにご登場願うしかないな―」となり、「先生、お願いします!」と声がかかります。
「はいよ」と応えて、トラブルの最前線に悠然と出向くのが舞台監督のもう一つの役割です。
黒澤明の『用心棒』で、ヤクザが三船敏郎扮する「先生!」を雇い入れるようなもの・・・とはちょっと違うかな?
(2004.7.29)
=== 「イベント雑記」という記事を、2003年から2005年にかけて書いていたメルマガに掲載していました。内容的に若干古さを感じる点はご容赦下さい。(掲載した日にちを文末に書きました)・・・こちらのブログに転記させていただきます。===