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懸賞はいつも当たり ⑩

 インターネットの世界では、一体どれくらい数の懸賞が、常時"掛かって"いるのだろう。国内だけに限定しても、大小合わせれば、相当数あるに違いない。
 小はオリジナルメモ帳やマウスパッド。
 化粧品など「新商品モニタープレゼント」というのもある。
 大は「現金1,000万円」。これらが当る可能性は、誰にでもあるし、電気製品やデジカメ、車、コンピュータ等のプレゼントは日常茶飯事だ。
 そして応募に際して、ハガキ1枚、切手1枚の負担も不要なのだ。
 「だとしても、こんなに当り続けるってことがあるんだろうか?!」
 「私の想像だけど、『gets!』は多分、相当数のフリーメールアドレスを取得していたのだと思うわ」
 「どういうこと?」
 「『gets!』はね、それを使って、ブロードバンドをいいことに、24時間懸賞に応募し続けたのよ。けなげねえ!」
 「ちょっと待てよ。24時間ってどういうこと?」
 「あら、さっき云ったじゃない。私、そのことに1ヶ月以上前から気づいていたって」
 「だから・・・」
 「私のために働いてもらっていたの、gets!クンには」
 「電源入れっぱなしで?」
 「寝るときはモニターの電源は落としといたわ」
 「本体は?」
 「もちろんPCの電源は入れっぱなし」
 「気づかなかったなあ」
 「あなたがうるさいから、本体のランプは見えないように、プランターで隠しておいたの」
 これで果たして「共犯関係」と云えるのだろうか・・・。
 まあ、いい。妻だし、身内だし、今さら云っても仕方がない。言い逃れするつもりははなからない。
 なるほど。「gets!」はそうして飽きもせず、四六時中応募し続けてくれていたわけだ。感心なヤツだ、うん。
 ん? 待てよ、普通応募の際、メールアドレスや住所、氏名、年齢など、個人データを書き込む欄があるよな。するとその見返りに、普通、広告メールがドット届くはずだ。それはどうなっていたんだろう?
 「君が消していたのかい?!」
 「いいえ・・・そうよね、そのこと気づかなかったわ。ひょっとして、それも「『gets!』が処理していたとか」
 「開いて、捨てて、消去したと・・・」
 「そうとしか考えられないわね。しかも一定期間を置いて、広告メールの解約もしてたんじゃないかしら」
 「なんだか、泣けてくるなあ」

 

 

 「で、どうするの?」
 「うーん・・・」
 文美枝の云おうとしていることは解る。
 この"懸賞生活"を「やめるの、どうするの」と、俺に決断を迫っているのだ。
 「私はどちらでもいいの。あなたが決めることよ」と云っているのだ。
 内心「ズルイ」とは思うものの、地球上のすべてのオス種の、DNAの中に埋め込まれた「優柔不断さ」を攻められているような気がして、俺は慌てて決断を下した。
 「よし、やめよう!」
 俺は生まれてこの方、何度となくこうした場面に遭遇してきたはずだ。
 「右か、左か」と問われ、「右だ、左だ」とすぐさま結論を出す。そしていつも後悔するのだ。
 「じゃ、なごり惜しいけどgetsクンとはお別れね!」
 云うが早いか、文美枝は作業に取り掛かった。
 「スタートボタン」から「コントロールパネル」→「プログラムの追加と削除」を選び、なぜか「〒」マークのついた「gets!」のアイコンをクリックし、続いて「変更と削除」へと進んだ。
 「あれっ? 変ね」
 「どうした?」
 「削除できないって」
 モニターにはエラーメッセージが出ていた。
 「ダメなのか?」
 「んー、手はあるわ。でも、ちょっとつらいなあ」
 「どうするんだ?!」
 「『システムの復元』を使えば多分消えてくれるはずよ。でも「gets!』を入手して以後、私がせっせと集めたソフトも一緒にいなくなってしまうの。つらいわあ」

《つづく》

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gets!

 

 

[つづき]懸賞はいつも当たり ⑪

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